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最近、自分がフリーメールを活用できない人間だってことに気付きました。

2008年04月12日

ブログ小説 焔-HOMURA-[integral] 第168回


健気ね。


 予想の範囲内の、答えだった。

 シドニーは、アイザックの隠れ家を知っていた。彼女とアイザックが、いつ頃からなのかは分からないが、復縁していたのであろうことは、容易に考えつくことだ。あるいは、元々、彼らの繋がりは切れていなかったのか。

「もっと、具体的にお願いしたいわね」鈴乃は言った。

「あの人がジェイソンを殺して、姿を消したあとのことよ。カザギワの人が来て、言ったの。“アイザック・ライクンを殺るために、チームを編成した。あの、裏切り者のクソ野郎は、必ず亡き者にする。だから、安心してくれ、奥さん”ってね」

「その人の名前は?」

「確か、イオリと言っていたわ。組織の情報を管理してる人だって」

 井織誠だ。鈴乃は思った。もう、井織誠が歩んだ道と、自分の歩む道が、交わることはないと思っていた。それが、交わった。縁を感じた。手にかけたことで、自分と井織誠を繋ぐ縁の糸が、太くなったのかもしれない。そう思った。

井織誠と光子を殺したときに使った減音器(サプレッサー)は、海に捨てた。今、手元にあるマカロフには、何も装着していない。けれど、少しだけ、銃身が重たくなった気がした。彼らの命の分だけ。

「それで? そこから、あなたはどうしたの?」

「アイザックの中にはもう、この女しかいなかった」シドニーは憎々しそうに顎を動かして、隣にいるリタ・オルパートを示した。リタは我関せずといった感じで、目を閉じ、黙っていた。眠ってはいない。体が脱力していないのは、見れば分かる。シドニーは続けた。「それは、分かってた。けど、諦めたら、本当に終わりだものね。彼のために生きていれば、いつか、彼もあたしのために生きてくれるんじゃないかと思った。だから、好きでもない男とも、寝たわ。情報を引き出すためにね」

「引き出した情報は?」

「もちろん、あの人に知らせたわ。電話や、メールでね。居場所は、教えてくれなかったから」

 アイザックがこれまで、カザギワに捕まりも、殺されもしなかったのは、カザギワで培われた殺人能力と、ただの運のお陰だと思っていた。だが、それだけではなかったのだ。シドニーによる、情報の漏洩(リーク)があったのだ。

「健気ね」嘲笑うように、リタは口許を緩めた。

 シドニーが目を剥いた。

「ああ、さぞ間抜けに見えるでしょうね、あたしのことが!」シドニーは金切り声を上げた。「自分の好きなことをしてるだけで、あなたはアイザックに愛されるんだものね。でも、あたしは違うの。好きでもない男とベッドに入って、料理をするための包丁を、人を脅すための銃に持ち替えなきゃならなかった」シドニーはそこで、力なく首を振った。「いえ。それでも、あの人は」

 脅す。シドニーのその表現に、引っ掛かりを覚えた。

「脅した? どういうことなの、シドニー?」鈴乃は言った。

つづく




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posted by 城 一 at 08:20| 長編小説 焔-HOMURA-[integral] | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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