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最近、自分がフリーメールを活用できない人間だってことに気付きました。

2008年09月17日

ブログ小説 焔-HOMURA-[integral] 第195回


罪悪感という名の毒。


 安希は激痛に体を震わせた。椅子に手足を拘束された状態で、最大限に。慶慎は体を捻った。手錠で繋がれた両手を椅子の背もたれ越し、腰の後ろからうなじまではね上げる。椅子を蹴り飛ばし、床に突いた頭と肩を支えに、体のばねだけで跳び、回転。起き上がる。突き出された鉄パイプを足場に、跳躍。正面の〈ナンバーズ〉の顔に前蹴りを叩き込む。反動を利用して後方へ。回転。落下しつつ二人目の後頭部を蹴り飛ばした。背中に衝撃。あえて踏み止まらず、攻撃された勢いのまま転がる。そして跳躍。三人目の顎に頭突き。そのまま飛び上がろうとした肩を木刀で打たれた。背。腹。打撃が重なる。右胸に突き。仰向けに倒れる。天井の明かりを人垣が遮る。誰かが振りかぶった。衝撃。視界が散った。



 目を開けた。リタ・オルパートがステージの縁に腰を下ろし、手を叩いていた。

「さすが、〈カザギワ〉の殺し屋。両手を拘束された状態から、三人を打ち倒すとはね。たいしたものだわ」

 慶慎は、椅子に固定しなおされていた。今度は、ステージ上で自由を奪われている女たち三人と、同じ方法だった。椅子は肘掛けと脚が四つあるものに変わり、それぞれに縄で手足をきつく縛り付けられていた。

「だから言ったじゃないか。最初から、その方法で縛っておけば、問題はなかったんだ」アイザックが言った。

「殺せ」

 慶慎は言った。安希は、痛みが治まったのか、静かになっていた。目を閉じている。頬には、涙を流した跡があった。

「話が、まだ途中だわ」リタが言った。

「御託は不要だと、何度言わせる」

「あなた、番号は?」リタが、ステージ上の〈ナンバーズ〉に言った。銀色の坊主頭の少年だ。彼は、“29”と言った。リタは頷いた。

「では、ミスタ・29。サニー・フゥの小指の爪を」

 29番は、言われた通りにした。サニーはギャグボール越しに、くぐもった悲鳴を上げた。

「やめろ、リタ・オルパート」

「ミス・オルパートと」

「くそくらえ」

「岸田海恵子」

 29番が、海恵子の小指の爪を剥がした。くぐもった悲鳴。サニーよりも、重ねた年月が長い分、声は低かった。

「くそっ、僕の爪を剥がせ」

「駄目よ。肉体的苦痛は、精神的苦痛を和らげる」

「なぜ、こんなことを」

 リタは微笑した。

「許可が出たようだから、御託を述べるわ」リタは言った。「人は思い出すことができる。だから、例えばあなたは、岸田海恵子を失った場合でも、思い出すことで、岸田海恵子に感じた感情、彼女と過ごした日々の記憶を、反芻できる。しかし、彼女の死に、自分が少しでも関わったら?」

 慶慎は悪態をついた。

「罪悪感という名の毒は、あなたの記憶の中に入り込み、岸田海恵子への感情を、思い出を、破壊する」

「それを分かっていて、僕が、彼女たちに、優先順位をつけると思うのか?」

「アイザック」

 リタの呼び掛けにアイザックは、十四インチのテレビほどの大きさの、箱を持ってきた。ピンク色で、ディフォルメを施されて二頭身になった青い、耳の垂れた犬と、黄色い猫が、満面の笑みを浮かべながら、ウインクをしていた。

「あなたが優先順位をつけなければ、どうなるか」リタは慶慎を見つめながら、箱に手を伸ばした。箱の上面には、拳大の穴が開いていた。彼女はそこから手を入れ、出した。彼女の手のひらの中には、小さな紙切れがあった。リタは、それを開き、言った。「サニー・フゥ。R-4」

 29番は、サニーの右手の薬指の爪を剥がした。悲鳴。慶慎はうつむいた。肘掛けが、力を込めた腕の下で軋んだ。耳を塞ぎたかった。リタが言った。

「この箱の中には、彼女たち三人の左右五本の指に対応した紙が入ってる。あなたが彼女たちに、優先順位を付けるのをためらった時間の分だけ、彼女たちは肉体的苦痛を受ける」

「やめろ」

「二週目は、彼女たちの手の指を、一本ずつ切断する。手の指が済んだあとは、足の指。その次は手足を。ねえ、坊や。最後に残った一人だけは、殺さないでおいてあげるわよ?」

「嘘だ」

「もちろん、信じなくても、わたしは一向に構わない。あなたが優先順位を付けられなければ、おそらく彼女たちは、手足を切断した辺りで、出血多量で死ぬ。一人でも、そういう死に方をした場合、さっき言ったルールは無効になる。あなたは、一人も助けられない」

「命に、優先順位なんて、付けられない」

「〈DEXビル〉の一件での活躍は、聞いてるわよ? 数えきれないほどの人を殺しておいて、それはないでしょう?」

「無理だ」

「坊や、あなたならできるわ」

 床が涙で濡れた。慶慎は泣いていた。

「殺せよ、僕を」

 リタが、箱に手を突っ込んだ。取り出した紙を読み上げる。

「市間安希、R-1」

 安希の右手、親指の爪が剥がされた。

つづく




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posted by 城 一 at 07:59| 長編小説 焔-HOMURA-[integral] | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年09月16日

マジすんません。

長らく更新が滞っています。ほんとにマジですいません。

まあ、お分かりのように物語は佳境。
なもんで、色々と複雑で、
一つ越えたら、また一つと、壁があるのでございます。

おめーがプロットを
細かいところまで練ってねーからだろとおっしゃられましたら、
それはもう返す言葉はないのでございます。

まったくもって、その通り。

ま、プロットがないからこそ生まれたものも、
たくさんあるのですけれども。

『焔integral』の半分はアドリブでできております。

まず大体からして、鏑木鈴乃がアドリブですからね。
あいつのことなんて、登場する直前まで、
僕の頭の中にはありませんでしたからね。

何の自慢にもなりませんが。

何はともあれ、
温かい目で見守っていただけると嬉しいのでございます。

面白いかどうかは十人十色なので保証はしませんが、
大事に書きますから!

俺なりに。
posted by 城 一 at 07:01| Message from Gusuku | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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