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最近、自分がフリーメールを活用できない人間だってことに気付きました。

2008年11月17日

ブログ小説 焔-HOMURA-[integral] 第211回(2版)


リボルバーU.


 鈴乃は、指先でこめかみを揉んだ。求めていたものが、目の前に現われた。だが、そのあっけなさと無造作さ、唐突さに戸惑いを覚える。達成感や喜びよりも、疑心の方が大きく膨らんでいる。

「どういうことなの?」鈴乃は言った。

「俺には経験がないが、想像はつく。自分の手で、愛している者の命を奪ってしまうってのが、これ以上ないほどに最悪なことだってのはな」小田は言った。「重たい話さ。そのくせ、話の重量とは反比例に、いたって単純な話だ。アンバーがリヨを殺した夜、あいつはギャング同士の銃撃戦の中にいた。<SKUNK>と<ロメオ>のな。新月で、真っ暗な夜だった。その上あいつは、敵さんに腹と腕を撃たれて、血を流しすぎていた。意識の状態も、判断力も、万全からは程遠い状態だった。戦場と言ってもいい場所の中で、あいつは背後に気配を感じた。仲間の居場所は全て把握している。背後にいる仲間はいなかった。だったら、どうする? あいつは振り向きざま、銃の引き金を引いた」

「それで?」

「終わりさ。あいつの放った一発が、リヨの致命傷になった」

「それなのに、どうして彼は、“<カザギワ>の殺し屋が、田村リヨを殺した”なんて話を信じているの?」

「信じてるんじゃなく」小田は言った。「すがってるだけかもしれんよ」

「同じことでは?」

 小田は鈴乃を見て、鼻孔からゆったりと息を吐き出した。

「人は、誰か大切な人間を失うと、心に穴が開く。アンバーの場合、その他に、情報的なものにも穴がある。リヨを殺した夜は真っ暗で、見通しが利かなかった。あいつは銃で撃たれて息も絶え絶え。意識が朦朧としていても、不思議じゃない状況だった。いくらでも、嘘が入り込む余地があるとは思わないか?」

 鈴乃は、ジップロックに入った拳銃を見つめていた。S&W M629ショーティ。この銃に使われる銃弾も、田村リヨの心臓に撃ち込まれた銃弾も、44マグナムだという点では一致する。

「かもしれないわね」鈴乃は言った。「でも、もしかすると、目の前の光景をはっきりと認識できるほどには視界があったかもしれない。街灯の光や、周囲の建物の装飾、窓の明かりで。そして、意識も朦朧とはしていなかったかもしれない」

「だから、言っただろ? すがってるだけかもしれんと」

 鈴乃は頷いた。

「本当に、持って行ってもいいの?」

「あんたはそんな、ボロボロの体を、車椅子で引きずってきた。引き下がるつもりもないくせに、遠慮するふりなんかするなよ」

「それでは」

 鈴乃は、拳銃の入ったジップロックを、クッキーの缶の中に戻し、膝の上に置いた。

「あんたは、このことで遠慮して、アンバーに手加減したりするのか?」

「いいえ。そんな余裕はないわ」

「そう。安心したよ」

「もし、彼に伝えたい言葉があるのなら、聞いておくわ」

「そんなものはない」小田は言った。「心臓が止まるまではきっと、俺が知ってるあいつは戻ってこないのさ」

「そう」

 鈴乃は、<quilt>を出た。バーバーに電話をかける。

「ネコよ。田村リヨを殺した犯人は、アンバーだった。証拠も手に入れたわ」

つづく




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posted by 城 一 at 00:46| 長編小説 焔-HOMURA-[integral] | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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