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最近、自分がフリーメールを活用できない人間だってことに気付きました。

2008年12月26日

ブログ小説 焔-HOMURA-[integral] 第215回(3版)


本当の味方。


 アンバーは、自らの顔に指先を食い込ませた。

 あいつ。

 記憶に蘇るリヴァの顔が、思考回路を焦げ付かせる。

 アンバーはまだ、リヴァと会ったビルにいた。建物中を歩き回り、床をかきむしり、壁を蹴りつけ、人目につかぬように息を潜めていた無線式のカメラを一つ残らず見つけ、破壊した。リヴァが座っていた椅子も同様に、床に何度も叩きつけて、跡形もなく壊した。

「俺は、やってない」

 誰にともなく、アンバーは言った。誰も答えない。真実がどこにあるのかを知らない上に、気休めを言うことを嫌っているのではない。ビルの中には、アンバー以外に、息をしている者はいなかった。<ナンバーズ>たちは皆、それぞれの姿勢で床に倒れ、絶命していた。アンバーに撃たれたのだ。疑心に満ちた、彼らの視線に耐えられなくなった、アンバーに。

「俺は、違う」

 アンバーは、ジーパンのポケットから“切手(スタンプ)”を取り出した。ドラッグ。LSDが染み込んだ切手だ。リタ・オルパートがアンバーや、<アンバー・ワールド>、<ナンバーズ>の面々に配っている代物。それを使えば、雑音をシャット・アウトすることができた。俺がリヨを殺した? 冗談じゃない。そんなことは、あり得ない。アンバーは、切手を舌に乗せ、LSDが唾液で溶けるのを待った。祈るように、床に額を擦り付ける。ゆっくりと深く、呼吸をする。世界が、やすりをかけられたかのように滑らかになり、全ての音がクラシック・ミュージックのようにゆったりと、おごそかに流れ出す。

 やがて顔を上げ、立ち上がると、アンバーはリタ・オルパートに電話をかけた。電話口に出たリタに、言う。

「なあ、リタ。俺は、リヨを殺してないよな?」

 リタは即答した。

『ええ、もちろんよ。何かあったの、アンバー?』

「リヨを殺したのは、俺だって言う奴が来たんだ」

『ひどい奴ね。きっと、<カザギワ>の人間ね。自分たちが犯した罪を少しでも減らすために、あなたになすり付けようとしてるのよ』

「だろ? 俺も、そう思ったんだ」

『あなたがそう思うのなら、間違いはないわ。何せ、現場にいたのはあなたなんですもの』

「そうだよな」

『そうよ』

 アンバーはリタに礼を言い、電話を切った。ビルを出て、<quilt>に向かう。S&W M629ショーティのこと。リヨのこと。あのガキに教えた人間は、他に考えられない。アンバーが店に入ると、小田豊春は、隈ができた虚ろな視線で、マグカップの中、冷めきったレモネードを見つめていた。小田は言った。

「来ると思っていたよ。来ないでほしいとも思ってたけどな。お前さんがここに来るのは、俺の中じゃ、最悪のシナリオだった」

「俺を裏切ったな」

「そんなこと、しちゃいないよ」

「あいつに、あいつらに。<カザギワ>に、銃を渡した。でたらめを吹き込んだ」

「<カザギワ>なんか、くそくらえだ。現実を見ろ、アンバー」

「くそくらえなのは、あんただ」

 アンバーは短機関銃を撃った。あるだけの弾を、小田の体に撃ち込む。彼の体から飛び散った血がレモネードに混ざり、赤く汚す。

「本当の味方が誰なのかも、分からなくなっちまったんだな、アンバー」

 小田は血を吐きながら、弱々しくそう呟き、死んだ。アンバーは弾が残っていないのにも関わらず、小田に向かって短機関銃の引き金を引き続けた。それだけでは収まらなくなり、短機関銃をバットのように握り、小田の頭に振り下ろした。何度も、何度も。小田の体が血に塗れ、誰とも見分けがつかなくなった頃、アンバーは店を出た。

<FOSTER>のメンバーに、電話をかける。インターネットで、アンバーの映像が出回っているのかと尋ねる。イエスという返事が返ってくる。

「それで? お前は、それをどう思う?」

『取るに足らないでたらめさ。気にすることはねえよ、アンバー』

「ああ、そうだ。そうだよな」アンバーは言った。「ところで、新しい曲が頭に浮かんだんだ。今、頭が究極に冴えててね。そっちに戻ったら、やってみよう」

『そいつは素敵だ』

つづく




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posted by 城 一 at 00:49| 長編小説 焔-HOMURA-[integral] | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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