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最近、自分がフリーメールを活用できない人間だってことに気付きました。

2009年01月05日

ブログ小説 焔-HOMURA-[integral] 第216回(2版)


人形.


 リタは、風際慶慎の監禁部屋を訪れた。<ナンバーズ>の少年たちが、慶慎に暴行を加えていた。慶慎は拘束されておらず、意志さえあれば四肢を動かせる状態だったが、そうしない。ただ、殴られ、踏まれ、蹴られるままにされている。ただ、うわごとのように、「彼女を笑うな」と何度も呪文のように唱えている。彼女。市間安希のことだった。彼女は度重なるレイプの影響で、艶やかな漆黒だった髪の色が抜け、白髪になってしまっていた。テレビの画面の向こうで、それが<アンバー・ワールド>や<ナンバーズ>から、笑いものにされている。

 部屋にリタが入って来たことに気付くと、見張り役を任せていた<ナンバーズ>の少年たちは怯えた表情を見せた。慶慎への暴力を許可した覚えはない。リタが一言、アイザックに言えば、彼らはたやすく死体になる。それを分かっているのだ。リタは言った。

「アイザックを呼んだりなんか、しないわ。けど、自重しなさい。それは、わたしの玩具なの。わたしの知らないところで、壊されてしまってはたまらないわ」

 既にもう、壊れてしまっているのかもしれないが。リタは思った。<ナンバーズ>たちを部屋から出て行かせて、床に転がった慶慎を見下ろす。もはや、人形と呼んでも差し支えない。

 不快な臭いがして、リタは慶慎の下半身を見た。慶慎は、小便を漏らしていた。リタは、慶慎の体から衣服を全て脱がせ、濡らしたタオルを用意して、それで慶慎の体を拭いた。知る限りでは慶慎に暴力を振るっていない<ナンバーズ>を呼びつけて、慶慎に新しい服を用意させる。黒いTシャツ、暗赤色のフリース。膝が白くなった、ごく薄い色のジーパン。最後に、丈が足下まである黒のダウンジャケットを着せる。点滴のことを考える必要はなかった。医者がもう大丈夫だと言ったので、もう輸血はしていない。

 慶慎の体を抱え上げ、椅子に座らせる。首ががくんと前方に倒れる。リタはその頬を両手で支えた。キスをしてみる。慶慎は何も言わなかった。目の焦点も合っていない。笑うな。力なく、そう言った。「分かったわ」とリタは答えた。慶慎にその言葉が届いたのかは、分からない。

 ノックのあとで、部屋にアイザックが入って来た。三人の少年を従えている。<ナンバーズ>の中に、アンバーやリタよりも、アイザックに同調する者が現われたのだ。アイザックは彼らを“兄弟”と呼び、左の袖だけ鮮やかな赤色をした、白いキルティングジャケットを与えた。その他の格好は、統一していない。黒いワッチキャップをかぶったのが、バラッド。長く伸ばした長髪を金色に染め、後ろで縛ってポニーテールにしたのが、ジャズ。黒髪に、目の覚めるような青い瞳を持ったのが、ブルース。アイザックがキルティングジャケットとともに、彼らに与えた暗号名(コード・ネーム)だった。

「少しの間、ここを離れなくちゃならない。職人と直接会って、新しい義手の最終調整をしなくちゃならない」アイザックは言った。

「大丈夫よ。わたしには、新しい騎士(ナイト)がいる」

「ヨシトのことか。そうだね。あの子なら、君のことを十分に守ってくれる」アイザックは、慶慎を見た。「少し、その子のことが羨ましいよ。君の、そんな目を見たのは、初めてだ」

「どんな目?」

「今にも泣き出しそうな。それでいて、たくさんの人が乗った船をいくらでも、平然と飲み込む、嵐で荒れた海のような目さ」

「そう」

 では。そう言って、アイザックは“兄弟”を連れて出て行った。リタは、もう一度慶慎にキスをした。慶慎は何の反応も示さなかった。

つづく




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posted by 城 一 at 00:18| 長編小説 焔-HOMURA-[integral] | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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