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最近、自分がフリーメールを活用できない人間だってことに気付きました。

2006年09月04日

ブログ小説 焔-HOMURA- scene3

●越智 彰治(おち しょうじ)/銀雹(ぎんひょう)

 ルシオは、ソファの上で腹を抱えて笑っていた。
「カザギワのナンバーワンとも言われてる殺し屋、銀雹の越智彰治も、大したことはなかったな。なあ?ええ?」
 ルシオが話しかけた男は、返事をすることなく、倒れた。後頭部にナイフが突き立てられていた。木の葉のような形をした、銀色の投げナイフ。
 ルシオの後ろで、高田の声がした。
「彼の評価をするのは、もう少し、待ってからにしてくれませんか?」
 ルシオが振り返ると、部屋の入り口とは全く反対側にある窓際に、越智と高田がいた。越智は、指と指との間に、投げナイフを挟んでいる。
「てめえ」
 部外者二人の姿を確認した男たちが、装備していた銃に手をかける。だが、引き金を引くことはできなかった。
 越智の着た灰色のコートが、荒々しくはためいていた。部屋の中が、銀色に染まる。部屋中を、銀色の木の葉が舞っていた。
 投げナイフを刺され、男たちが、次々に倒れていく。高田が、ソファと同じ要領で、窓枠に腰かけ、微笑んでいた。
「銀の雹が降っているようだ。誰かが、彼の投げたナイフの様子を見て、そう言ったらしいですよ。彼の手にかかるような者と言えば、裏の世界に生きる人間くらいしかいないが、なんとも詩的な人間がいたものじゃないですか」
 ルシオは、高田の言葉に頷いたきり、動かなくなった。体中に、投げナイフが突き刺さっていた。銀の木の葉が、数えきれないほど仕込まれた越智の灰色のコートが、重たくガシャリと音を立て、はためくのをやめた。
 高田は、シガレットケースから煙草を取り出しながら、喉の奥で、くっくっと笑っていた。
「全く、見る度に、目を疑いますよ。あれだけの銃相手に、投げナイフで引けを取らないんですから」
 越智は、わずかに乱れた帽子を直した。高田は、金色のライターで、くわえた煙草に火をつけた。
「さすが、殺しを芸術にまで昇華させた男ですね」
 越智は、指先に一本だけ、引っかけたナイフで、部屋の中にある、たくさんの死体を指し示した。
「これが、芸術か?」
「違うんですか?」
 越智は、コートのポケットに手を入れて、首を振った。
「少なくとも、俺の知っている芸術は、こんなものじゃない」


つづく
posted by 城 一 at 00:00| 長編小説 焔-HOMURA- | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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