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最近、自分がフリーメールを活用できない人間だってことに気付きました。

2006年09月04日

ブログ小説 焔-HOMURA- scene4

●風際 慶慎(かざぎわ けいしん)

ほとんど、歩くのと変わらないスピードで、慶慎は走っていた。背中がわずかに汗ばんできたのを感じる。
 昼前の街には、太陽の強い日差しが、真上から注がれている。
 慶慎は、走りながら、自分の体調を探っていた。やはり、悪い。
 昨夜、父から暴力を受けた、体のあちこちが、走るリズムに合わせて痛んだ。
 息が、いつもより苦しい。慶慎は、呼吸の一つ一つを、大きく、ゆっくりと行った。息苦しさに慌てて呼吸を乱せば、もっと苦しくなる。喘息の発作が、起きかけている。
 発作が起きていなければ、普通に呼吸ができるが、一度発作が起きると、ひどい場合には、どんなに息を吸い込もうとしても、胸の辺りが詰まったような感じがして、吸い込めなくなる。
 発作が起きる原因は、色々あった。環境や、天気。そして、精神的なものでも。
 ゆっくりと、大きく。息を吸い、吐く。
 横を、慶慎よりも幼い子供たちがじゃれ合いながら、駆け抜けていった。
 そんな、なんでもないことでも、注意を払って行わなければならない自分の体に、慶慎は、やりきれない気持ちになった。
 いや、生きているだけでも、感謝しなければならないのかもしれない。
 この街には、当たり前のように暴力と死が、転がっている。自分にだって、いつ、それが降りかかるかも分からない。
 生きたい。
 そのためには、力を得なければならない。
 一人で、生きていけるようにならなければならない。
 訓練の前のウォーミングアップ。今日は少し、長くかかりそうだった。

●C・C・リヴァ

「ヘイ、バーバー」
 そう呼ばれた、髪をソフトモヒカンにしている少年が、部屋の隅で力なく顔を上げた。腹を押さえたバーバーの顔色は、かなり悪い。足元には、昼に食べたばかりのものが、バーバーの胃から飛び出して、散乱していた。
「吐くなら、外行ってやれよ。部屋がゲロ臭くなるじゃんかよ」
「でも」
「行けよ。苦手なんだろ?でも、後でメシ、奢れよな」
「うん……」
 バーバーは小さく首を縦に振ると、うなだれながら、部屋を出て行った。
「ったくよ。いつまで経っても、慣れねえんだ。使えねぇな、バーバーの野郎」
 ひょろりと背の高い、黒人の少年が言った。両耳に、合わせて十個にもなるピアスをつけている。
「そう言うなよ、ダンク」リヴァは、背の高い黒人の少年の名前を呼ぶと、部屋の中を見ろとでも言うように、両手を大きく広げた。右手には、金色の金属バットを持っている。
「どっちかっつうと、これが平気な、俺たちの方が、おかしいのさ」
 リヴァが示した部屋の中には、十数人の死体が転がっていた。
 少年たちは、それらの一つ一つから、金になりそうな持ち物を、取っていたのだ。
 リヴァはナップサックに、煙草やライター、指輪やネックレスなどの、小物を入れていた。ダンクの方は、ドラムバッグ。財布やナイフ、ハンドガン、気に入った靴、ベルトを詰め込んでいる。
 リヴァは、死体の一つから見つけたライターに、目を奪われた。ギターを持った、骸骨の姿が彫られた、金で出来たジッポライター。リヴァは煙草を一本くわえると、そのジッポで火をつけた。ジッポはナップサックではなく、リヴァの履いていた、カーゴパンツのポケットに入れられた。
「にしても、ルシオが、こんなに簡単に殺られちゃうとはね」
 ダンクは、バスケットシューズの一つを、自分の足のサイズに合うかどうか、試しに履いていた。
「ルシオさん、だろ」
 ダンクの言葉に、リヴァは、顔をしかめる。
「逝っちまった野郎に、気ぃ使う必要なんか、ねえだろ?」
 リヴァはそう言うと、ルシオの死体を金属バットで突いた。ダンクは履き心地を確かめるように、バスケットシューズを履いた足で、床を踏み鳴らした。
「ま、そうだな。あいつ、俺らにいっつも、偉そうにしてたしな」
「でも、どうやってこんな人数を殺ったんだ?」
 ダンクが、リヴァを見て、ニヤッと笑った。
「なんだお前、知らねぇの?カザギワって組織にさ、いっぱい、スゲェヤツがいんだよ」


つづく
posted by 城 一 at 12:00| 長編小説 焔-HOMURA- | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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