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最近、自分がフリーメールを活用できない人間だってことに気付きました。

2006年09月07日

ブログ小説 焔-HOMURA- scene13

●越智 彰治(おち しょうじ)/銀雹(ぎんひょう)

 越智は裸で、ベッドに横たわっていた。胸には、汗が浮かんでいる。呼吸が荒い。
 越智の隣には、サラが、彼と同じように裸で、座っていた。彼女の体も汗で光ってはいるが、呼吸は静かだ。
 サラはすぼめた厚ぼったい唇から、煙草の煙を吐き出しながら、越智を見下ろした。
「ヘバるのが早いわ」
 そう言って、サラはふふんと笑う。
「これでも、かなり頑張った方だ」越智は言った。
「あなたって、確か、芸術家なんて呼ばれてるんじゃなかったっけ?」
「一部の人間には」
 越智の言葉を聞いて、サラは肩をすくめる。
「オーケー。とにかく、わたしから見て、あなたはイマジネーションが足りないと思うわ」
「君は娼婦として、客への配慮が足りないと思う」
「あら、失礼。長年、相手をしたげてるのに、全く上達する気配がないものだから、つい本音が出てしまったの」
「ひどいな」
「一つ、聞いてもいい?」
「どうして上達しないか?」
「それも気になるけど。そうじゃなくて、どうして人を殺した後に、セックスしたくなるのかってこと」
 サラが、視線だけを動かして、灰皿を探した。越智はベッドのすぐ側にあったテーブルの上から、サラに灰皿を取ってやった。
「ね、どうして?」
 越智は肩をすくめた。
「たぶん、懺悔のようなものだ」
「個室で、神父相手に告白するヤツ?」
「そうだ。それで、罪を許してもらう」
「主は汝を許したもうた?」
「そうだ」
「わたしたちが言うのは、満足した?∞よかった?∞お金ちょうだい∞延長するなら、あといくら必要よ≠ニか、それくらいだわ」
「言葉の問題じゃないんだと思う」
「それに、確かに罪を……どんな人間を殺したのか、とか告白する場合もあるけど、しない場合も多い」
「だから、言葉の問題じゃないんだ」
 サラは、浮世絵のようなイラストの描かれた箱から取り出したマッチで、新しい煙草に火をつけていた。
「人を殺して来たのにも関わらず、何も言わずに受け入れてくれるだけで、全てが許された気になるんだ」
「受け入れる?」
「ああ」
「股を開く?」
「少々、直接的過ぎるような気がするが、そうだ」
「たとえ、それが幻でも」
「そうだ」
「驚いたわね。誰にでも股を広げる売女が、神父か神様ってわけ?」
「体の中で、命を作ることができるのは、君たちだけさ」
「そして、その命を、男たちが破壊する。バン、バン、バン」
「考えてみれば、ひどい世界だ」
「議論の余地もなく、この世はくそったれよ」
「あんまり、汚い言葉を使うべきじゃないよ」
「例の男の子も、命を破壊する側に回るの?」
「そうだ」越智は言った。「そうならなければ、彼が壊される」


つづく
posted by 城 一 at 03:00| 長編小説 焔-HOMURA- | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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