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最近、自分がフリーメールを活用できない人間だってことに気付きました。

2006年09月07日

ブログ小説 焔-HOMURA- scene14

●越智 彰治(おち しょうじ)/銀雹(ぎんひょう)

「彼の……慶慎の父親は、誰が見てもくそ野郎だ」
 越智の呼吸は、今では落ち着いていた。サラは、長く伸ばしたプラチナブロンドの髪の毛先を、煙草を持っていない方の指先に絡めて、弄んでいた。
「カザギワの、ボスの息子でしょう?そんな暴言、吐いていいの?」
「告げ口でも、するかい?」
「まさか。でも、そのくそ野郎の元に、彼がやって来る理由を作ったのは、あなたなんでしょう?あなたが、彼をサーカスで見つけた。それで……命を破壊する才能?ってのを、見出した」
「そういうことになってる」
「違うの?」
「風際文永が、突然息子を見つけたと言って、俺をサーカスに連れて行った。そして、金を積んで、強引に慶慎を引き取って来た」
「あくまでも、風際文永が」
「そうだ。慶慎は、サーカスでナイフ投げをやっていた。だから、ナイフさばきが良かったが、カザギワで殺し屋を名乗れるほどの才能は、感じなかった」
「普通の子だったのね。ただ、ナイフが上手な」
「だが、文永は慶慎を連れ帰ると、すぐに虐待を始めた。しかも、かなりひどく。彼は前にも……そのときは実の子ではなかったが、虐待をしてる。そして、度が過ぎて、その子を殺してしまっている。内臓破裂で」
「ということは、何?あなた、その子を助けるために、嘘をついたの?」
「仮にも、カザギワにいる殺し屋の中でトップと言われてる俺が、才能があると言えば、風際秀二郎は慶慎のことを無視できなくなる。彼の力を見てみたくなる。慶慎のことは、文永だけの問題ではなくなる。そうなれば、文永の虐待に、ある程度ブレーキをかけられる。そう思ったんだ」
「それは、成功したの?」
「ある程度」
「あなたが才能があると言ったお陰で、その子は望む望まないに関わらず、人を殺さなければならない」
「彼自身が死ぬよりは、マシだと思ったんだ」
「それは、彼が決めることだわ」
「何にせよ、文永に捕まった時点で、彼の自由は、ほとんど奪われてしまったようなものだ。風際文永は、慶慎に、一人で生きる方法を教えたり、力を与えたりはしない。慶慎は、いつまで経っても、自立できない。風際文永の側に留まるしかない。結果、どうなると思う?遅かれ早かれ、彼は風際文永の下で、命を失う」
「でも、あなたの下で殺し屋としての力をつけることで、自立することができる?」
「そうだ」
「どうして急に、そんな気まぐれを起こしたの?」
 サラは、新しい煙草に火をつけようと、またマッチを取り出した。
「俺たちの子が生きていれば、今頃、ちょうど彼くらいの年だと思った」
 サラはマッチを擦るのに失敗し、折ってしまった。悪態をついて、折れたマッチを灰皿に捨てた。
「随分と、感傷的な殺し屋なのね、あなた」
「否定はしないよ」


つづく
posted by 城 一 at 06:00| 長編小説 焔-HOMURA- | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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