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最近、自分がフリーメールを活用できない人間だってことに気付きました。

2006年09月07日

ブログ小説 焔-HOMURA- scene17

●狩内 蓮(かりうち れん)

 周囲にいた男たちが、テーブルや椅子を元に戻していた。奈々恵も、床に散ったカードを拾っている。
 蓮は、彼女に取り上げられたジーパンに、手をかけた。奈々恵が蓮を見た。蓮は、気にすることなく、ジーパンを履く。
「借りるだけだ。俺が全裸で外を歩いて、おまわりに捕まっていいのか?それとも、俺のモノを、もっと鑑賞していたい?」
 奈々恵は肩をすくめると、蓮を見つめたまま、集め終わったカードでテーブルを、コツンと叩いた。
「最後にもう一度、勝負しない?」
 蓮が、大袈裟に、両手を広げた。
「もう賭けるものがない」
 奈々恵は、蓮を見つめたままだ。蓮は素足にジーパン、上半身は全く裸の状態で、参った、と言うように、両手を挙げた。
「これ以上、何にも取りようがないだろ」
 奈々恵がカードを一枚取って、蓮のいる方向へ滑らせて、言った。
「それを賭けて」
 蓮は、カードを取り上げて、見た。
「ハートのエース」
「そう」
 蓮は、首を傾げた。
「つまり?」
「ハートは、心臓」奈々恵は蓮を見ながら、ゆっくりと唇を動かして、続けた。甘く、囁くように。「つまり、あなたの命を賭けてほしいの」
 奈々恵の言葉を合図に、店の中に、十人近い男たちが、突然入って来た。全員、それぞれに銃火器を持っている。銃口は全て、蓮へと向けられていた。
 蓮は、奈々恵を見たまま、自分がいつも持ち歩いている、銃を探した。奈々恵の手元を見て、その所在を思い出した。
 奈々恵の持っている銃、それこそが、蓮の探し物だった。奈々恵は、それで、蓮の左胸に狙いを定めていた。
 ポーカーを観戦していた野次馬たちは、店に突然入って来た男たちに尻込みして、後ずさりしている。三人の少年たちだけが、蓮と奈々恵の側から、離れようとしない。
 蓮は、奈々恵から視線を外さずに、言った。
「がき共、どうやらお遊びの時間は終わりみたいだ」
 金属バットを持った少年が、言った。
「分かってる」
 奈々恵が言った。
「知り合い?」
「いや。ただの、暇なませがき共だ」
「そう」奈々恵は言った。「で、どうするの」
「煙草、くれないか」
 奈々恵は、蓮を見た。そして、蓮から取り上げた煙草を取り出し、中に武器の類が仕掛けられていないかどうか、確かめてから、蓮に投げ渡した。蓮が煙草をくわえると、奈々恵が、自分のライターで火をつける。
 一服して、蓮は言った。
「やろう」
 蓮はテーブルの上、奈々恵に向けて、音もなくハートのエースを滑らせた。


つづく
posted by 城 一 at 15:00| 長編小説 焔-HOMURA- | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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