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最近、自分がフリーメールを活用できない人間だってことに気付きました。

2006年09月07日

ブログ小説 焔-HOMURA- scene19

●C・C・リヴァ

 あらら。リヴァは心の中で呟いた。
 バーの中で生き残っているのは、リヴァ、ダンク、バーバーの三人。それに蓮、ウエイトレスに、運良く物陰にいたことで助かった、床で頭を抱えている男、一人だけだった。他は全員、死んだ。
 床で頭を抱えている男は、大きく腹が出ていて、どこかのNBAのチームの、黄色いユニフォームを着ている。奈々恵とかいう女の仲間たちに怯えているのは、演技だ。リヴァには、雰囲気で分かった。
 リヴァには、怯えどころか、殺気さえ、その男から感じた。
 蓮が、かすれた声で言った。
「殺す」
「丸腰で?」
 奈々恵が笑った。
「ジョーカーを出せ」蓮が言った。
 奈々恵はもはや、呆れた顔で言った。
「わたしたち、ジョーカーは入れていないでしょう?」
「ジョーカーを出せっつってんだ。聞こえねえのか!」
 蓮が怒鳴った。リヴァの視界の端で、NBAの男が動いた。
 蓮の言うジョーカーが、宙を舞った。手榴弾。ピンは既に、外されていた。
 この狭い酒場の中で、手榴弾を使うなんて、正気の沙汰じゃねえ。リヴァは声を張り上げた。
「ダンク!」
 リヴァと一緒に、ダンクがバーバーの袖を鷲摑みにして引き寄せながら、後ろに飛んだ。バーバーのフォローをするのは、大抵、ダンクの役目だった。三人で体当たりして、側にあった窓を割る。外へ。
「嘘」
 奈々恵の呟き。
 コツン。ジョーカーが、テーブルをノックした。
 爆音。
 外へ転がり出したリヴァたちの上に、たくさんの木とガラスの破片が、降り注いだ。

●狩内 蓮(かりうち れん)

 蓮は深く、ゆっくりと、息を吐いた。
 痛む額に手をやると、ぬるっという感触がした。血だ。体中を駆け巡る激痛に耐えながら、蓮は床を這った。まだ、はっきりとは分からないが、肋骨の辺りが何本か折れているだろう。
 床に当てた手に、何かが触れた。奈々恵に取り上げられた、蓮の銃だった。手に取ろうとしたが、銃声がして、それは弾き飛ばされてしまった。
 少し離れた所にあった、手榴弾の爆発によって死亡した者たちの山の下から、生き残った男二人が現れた。その間から、奈々恵。爆発で、チャイナドレスが所々、破れていた。左腕が出血で真紅に染まり、ぶらりと垂れ下がっている。奈々恵の表情は怒りに満ちていた。
「イカサマひとつ見抜けないくせに、やってくれたわね」
 蓮は、軽く笑った。奈々恵が銃底で、蓮の頭を殴った。蓮は、床に突っ伏した。
「しかし、ツガ組の幹部、白虎の狩内蓮も、そうなっては、無様なだけね」
「そうかい。俺から見りゃ、自分のパンティの脇にカード挟めてる方が、無様に見えるがね。ベッドで彼氏に笑われるぜ。いるかは知らないが」
 奈々恵は、ぴたりと動くのをやめて、蓮を見た。蓮は、くっくっと喉の奥で笑っていた。
「他に五人、部下を隠してるのを、まだ俺に気づかれてないと思ってるのもな」
「お前」
「生き残った男、右は白石、左は木元だったかな?合ってるかい、三浦奈々恵」
 奈々恵は、愕然とした表情で、蓮のことを見ていた。
「驚いた?俺が、何で飯食ってると思ってる、ビッチ」蓮は、自分のこめかみを指で突いた。「ここだよ、このくそあま」
 奈々恵は、何かを払うようにして、手を胸の前で振った。
「殺れ」
 命令に従おうとした白石と木元は、銃声の後に、倒れた。ポールは、銃口を、今度は奈々恵に向ける。蓮は言った。
「てめえらの縄張りで、おとなしくやってりゃいいものを、ちょっと調子こいちまったなあ、ミカドの下っ端が」
 奈々恵はニヤリとしながら、首を振った。
「あなたが言ったことよ。わたしには、まだ、部下がいること」
「そうだ。で、俺が言ったってことは、どういうことだ?」
 二人は同時に片手を天井へ向けて、掲げた。
 部下が現れたのは、蓮の後ろだけだった。
「詰みだ。お嬢さん」


つづく
posted by 城 一 at 21:00| 長編小説 焔-HOMURA- | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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