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最近、自分がフリーメールを活用できない人間だってことに気付きました。

2007年01月13日

ブログ小説 焔-HOMURA-[integral] 第12回

 慶慎は自ら床を蹴り、回転した。心臓を捉えた拳の威力を最小限に抑える。少年の腕に自分の腕を絡め、腕ひしぎ十字固めを狙ったが、できなかった。吹っ飛んだ。背中から壁に衝突する。横隔膜が硬直した。息が吸えない。いくら口を開いても、空気が入って来ない。
 黒人の少年は待たない。椅子が飛んで来た。横に転がり、かわす。その先に少年の足があった。かわせない。両手を掲げた。ガードの上からでも衝撃は十分にあった。再び慶慎の体は飛んだ。別の壁にぶつかる。
 既に詰まっているところから、慶慎は息を殺した。物音を立てないようにする。黒人の少年は、耳を澄ますようにして、動きを止めた。
 冗談じゃない。慶慎は思った。仮にもカザギワの殺し屋である自分が、目隠しをしたツガ組の構成員に倒されるわけにはいかない。静寂の中で、慶慎は態勢を整えた。
 しかし。相手の黒人の少年に、見覚えがあるのも確かだった。目隠しがなければ、分かるような気がしたが、思い出せなかった。
 蓮が、ショウでも見るかのように、楽しそうに慶慎を横目で見た。実際、彼らにとってはショウなのだろう。慶慎は歯を食いしばった。
 呼吸を満足に行えないことで、体力の消耗が激しい。時間をかけるわけにはいかなかった。
 慶慎は飛んだ。死角を突いた。思った瞬間、目隠しをした顔がこちらを向いていた。拳が唸りを上げる。でたらめだ。力任せに振られていた。その拳の上でステップを踏む。そして落ちながら膝で少年の額に着地した。しかし、揺るがない。膝ごと足を抱え、投げられた。空中で身を翻す。壁に着地。少年が追いかけるようにして飛来していた。ドロップキックだ。慶慎は壁を蹴り、空中で体をずらした。少年の両足は壁を捉え、破壊した。隙。少年は両手で顔面をガードした。構わない。ガードごと蹴り飛ばす。
 慶慎と黒人の少年は共に、その勢いを利用して、距離を取った。慶慎の頭が、熱を持っていた。酸素が満足に行き渡っていないのだ。ちくしょう。声に出さずに悪態をつく。動きの鈍い頭を、必死に回転させていた。まだ、少年のことを思い出せなかった。
 黒人の少年。引き締まった体。剃った頭。両耳で、合わせて十個ほどもあろうかというピアス。確実に、見覚えがあるのだ。
 少年が地を蹴った。拳。降り注ごうとするのを、懸命にさばく。ミドルキック。肘と膝で受けた。瞬間、頭を鷲摑みにされていた。頭が潰されてしまうのではないかというほどの、握力だった。慶慎の体は、少年によって軽々と持ち上げられる。
 慶慎はもがいた。が、逃れられない。床に頭ごと叩きつけられた。視界が揺れた。意識が、コンマ数秒、飛ぶ。少年の手は、それでもまだ離れない。今度は壁に叩きつけられる。前よりも長く、意識が飛んだ。
 ほとんど無意識の状態で、慶慎は神経を集中させた。拳の先端、骨。少年の肘、関節と関節の隙間に打ち込む。少年が小さく呻いた。頭を掴んでいた手が緩む。ほどき、懐に潜り込んだ。みぞおちに膝。下がった頭を顎ごと掌底で打ち抜く。少年の体が、ぐらりと揺れた。脱力したのが分かった。そして、膝から崩れた。
 慶慎は少年の体を受け止め、その目隠しを取った。
 やはり、会ったことのある少年だった。慶慎は、まだ喉を引きつらせるようにして、それでも一瞬ほどしか吸えない空気で、なんとか肺を落ち着かせながら、かろうじて呟いた。
「ダンク、どうしてここに」



つづく




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posted by 城 一 at 01:23| 長編小説 焔-HOMURA-[integral] | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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