Gusuku LABELへようこそ!
最近、自分がフリーメールを活用できない人間だってことに気付きました。

2008年01月13日

ブログ小説 焔-HOMURA-[integral] 第141回(3版)


あたし、膣出しNGなんです。


 噴き出した汗が、背中とソファの間に、不快な感触を作っていた。暖房が、効きすぎているのだ。体が動く度に、耳障りな音がする。
 アンバーが、鈴乃の上で、腰を振っていた。セックス。今夜、何度目になるのか、もはや数える気にもならない。性器が、痺れと痛みを帯びていた。無理もなかった。ここ四、五時間。休みなく、ずっと、セックスが続いている。
 勝谷に抱かれると、<フォスター>の者たちが、我先にと、鈴乃の体に群がってきた。皆に、目をつけられていたらしい。声をかけられなかったのは、鈴乃が、近寄りがたい雰囲気をまとっていたからだと、誰かが言っていた。
 群がってきた者たちは、ひとりずつ相手にした。複数人同時に相手にして、わけも分からなくなり、弄ばれるのも癪だ。
 尻の穴の方を、使いたがる者もいた。好きにさせた。ローションを使わせることだけは、忘れなかった。
 アンバーの首から下がるネックレスが、チカチカと光を反射させていた。髑髏をモチーフにした、ペンダント・ヘッド。その両目には、赤い石がはめ込まれていた。
 アンバーとは、マリを交えての3Pもした。マリは、女同士で肌を重ねることに、慣れているようだった。抵抗する素振りも見せなかった。鈴乃とマリは、互いの体から分泌する体液を、舐め、すすり、飲み、味わいあった。そのとき感じた、小さな罪悪感は多分、シドへのものだ。彼の恋人(オンナ)を、奪ってしまった。そんな感覚に襲われた。
 鈴乃は瞼を閉じた。体が、痙攣する。オーガズムだ。ビクビクとのたうつ自分を、客観的に、離れた場所から見守る、もうひとりの自分がいる。心と体が、分離するのだ。ふたつが一緒のまま、達するのは、兄に抱かれたとき以外にない。満足気な表情で見下ろしているアンバーを、胸の内で、嘲笑った。
 アンバーが、ペニスを抜いた。絶頂に達した鈴乃を、気遣っているのだ。薄っぺらい優しさだ。アンバーは笑い、鈴乃の頬に張りついた髪の毛を、そっと剥がした。
「そろそろ、このパーティも終わりだな」アンバーが言った。
 バーの中で起きている者は、もう、鈴乃とアンバーしかいなかった。静かなものだった。皆、それぞれの体勢で、ぐったりと床に倒れ、眠りに身を投じていた。
 鈴乃は、テーブルの上にある、空のグラスを指差した。
「氷、取ってくれる?」
 かろうじて残っていた、溶けかけの氷の塊をアンバーから受け取り、口に含む。熱に侵され尽くした体に、ひと粒の清涼感。安堵の溜め息が出る。
「疲れたかい?」
「さすがに」鈴乃は言った。
 アンバーの左手が、鈴乃の胸を揉んでいた。愛撫と言うよりも、ただ、落ち着く場所を求めている感じだった。その薬指には、全く同じ造りの銀の指輪が、ふたつ重なっている。
 鈴乃は言った。
「その指輪、何なの?」
「たいした、意味はねえよ」
 アンバーは、視線を指輪に落としたまま、そう言った。自分に、そう言い聞かせようとしているようだった。
「そんなはずないでしょう? 左手の薬指よ」鈴乃は言った。「決まった相手がいるのに、こんなパーティをしてていいのかしら?」
「いいんだよ」
 ぶっきらぼうにそう言った、アンバーの表情は曇っていた。指輪には、“デリケートな部分”があるらしい。鈴乃は、目を細めた。そういうことが分かると、放っておけない性質だ。が、言葉を加える前に、アンバーのペニスに、再び体を貫かれていた。
「お喋りは、後回しにしようぜ、ベイビ。パーティの締めといこう」
 不意に再開したピストン運動に、鈴乃は舌打ちした。下降線を描いたあと、低い所で落ち着いていた、快楽のグラフが、一気に跳ね上がる。
 アンバーは、舌なめずりをした。
「俺の“決まった相手”にでも、なりたかったのかい?」
 アンバーのピストンが、激しさを増した。鈴乃は、唇を噛んだ。手のひらが勝手に、何か、掴むものを探していた。かと言って、アンバーの手は、欲しくない。鈴乃は、自分の体を抱き締めるようにして、両肩を掴んだ。
 抱えられた太腿に、アンバーの爪が食い込んだ。その口から漏れる声が、高まっていく。アンバーの腰が震えた。
「膣(なか)に、出していいんだろ」
「ノー・グッド」
 テーブルや椅子を転がし、アンバーの体が宙に舞った。蹴り飛ばしていた。快楽の共有はしても、子種を子宮で、受け止めてやるつもりはなかった。
 床で腰を強打したアンバーは、目に涙を浮かべながら、痛みにのたうち回った。絞り出すような声で、言った。
「てめぇ」
「そんなことだろうとは思っていたけど、あたし、膣出しNGなの。ごめんなさいね」
 アンバーが、飛びかかってきた。顔が、真っ赤に染まっていた。射精寸前で足蹴にされたのが、よっぽど、頭に来たらしい。気持ちは分かるが、容赦する気はなかった。右ストレートを奔らせる。鳩尾へ、一発。アンバーの体は、墜落した。それきり、床で動かなかった。気絶していた。
 鈴乃は、側に落ちていた、誰かのダッフルコートを、アンバーの体に掛けた。
「今度から、ちゃんと避妊はするのね。焦らされて悦ぶほど、Mでもないんでしょ?」
 鈴乃は言った。アンバーはもちろん、何も言わなかった。
「騒がしいな。随分激しい、ファックだ」
 カウンターの奥から、勝谷が出て来て、言った。Tシャツに、トランクスのみという格好だった。
「あら。見ないと思ったら」鈴乃は言った。
「ああ、あんたか」勝谷は、自分の禿頭を撫でた。側頭部に残る、少ない髪の毛には、寝癖がついていた。「事務所で、寝てたんだよ。パーティは、楽しめたかい?」
 鈴乃は、微笑を浮かべた。
「それなりに」
「そいつは良かった」
 勝谷は、カウンターに入り、鈴乃を見た。軽く握った拳で、カウンターをノックするように、叩く。鈴乃は頷き、スツールに腰を下ろした。
「モーニング・コーヒーを、ご馳走するよ。お嬢さん」勝谷は言った。
 鈴乃は、窓の外を見た。
 夜が明けていた。

つづく




続きを読む
前回の話を読む
ブログ小説 焔-HOMURA-[integral] 第1回から読む
ブログ小説 焔-HOMURA- scene1から読む
posted by 城 一 at 12:27| 長編小説 焔-HOMURA-[integral] | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。