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最近、自分がフリーメールを活用できない人間だってことに気付きました。

2008年04月11日

ブログ小説 焔-HOMURA-[integral] 第167回(2版)


賢明な判断ね、マダム。


「あなたが、カザギワの情報管理部の人間と寝てるって話を聞いたわ」

 シドニーに言った。ゆっくりと話ができそうな機会を捕まえるまで、二日もかかってしまっていた。

 アイザック・ライクンは、現われていない。一度、リタから取り上げた携帯電話に、連絡が入った。すぐに、シドが出た。それがいけなかった。リタとアイザックは、電話をするとき、一度は必ず、出ずに電話が切れるのを待つ決まりになっていたのだ。リタから、その話を聞いたときには、もう遅かった。アイザックは、シドとは一言も交わさずに、電話を切ってしまった。掛けなおしても、通じることはなかった。

 さらにその後、無線式の小型カメラが、家の至る所から見つかった。すぐに全員でカメラを探し、取り外す作業に取り掛かったが、アイザックに、こちらの面子と人数が知れてしまったことは、間違いなかった。

 人数を知られてしまったのならせめて、ヤツの虚を衝く努力をすべきだ。そう言って、リヴァは、ダンクとバーバーを連れて、外へ出ていた。

 シドは台所で、昼食の用意をしていた。朝、昼、晩。バーバーと二人で交替しながら、料理をしていた。好きなのだろう。

 だが、ログハウスの中にあった食材も、もうすぐ底を突く。最初はそれなりに豊富にあったが、人数は七人だ。リタとシドニーもいるのだ。長く持たないのは、当然だった。アイザックが、これ以上持久戦を続けようとするのならば、こちらも対応策を考える必要がある。警備を多少手薄にしてでも、物資を補給する道を確保するか、あるいは、リタを連れて場所を移動するか。後手を取り、少々不利な状況に陥っていた。

「そんなことを知って、どうするの?」

 シドニーが言った。

「質問を質問で、返さないでほしいわね」

「ノーコメントよ」

 シドニーが縛り付けられている椅子の脚を、蹴り砕いた。前方のものだけ。マカロフの銃口を上に向け、待つ。バランスを崩した彼女の額が、マカロフの上に下りてきた。撃鉄を上げる。額に感じたであろう銃口の冷たさと、撃鉄の音に、シドニーは目を見開いた。

「よく聞こえなかったわね、シドニー」

「撃ったら、大きな音がするわ」

「だから?」

「あなたの仲間が、黙っちゃいないわ」

「なぜ?」

「あたしから、情報を引き出せなくなる」

「残念ね、シドニー。あたしたちの目的は、リタ・オルパートとアイザック・ライクンなのよ。そして、アイザックの弱点(ウィークポイント)である、リタは捕まえた。情報で小競り合いをする段階はもう、過ぎたのよ」

「けど、今、あたしがカザギワの人たちと寝てるってことを、聞こうと」

「そう。その話は、本当なのね」

 シドニーは、鼻筋に皺を寄せた。

「そのことに関して、聞きたいんでしょう? でも、あたしを殺したら」

 マカロフを、少し下に引いた。それに応じて、シドニーの体も、椅子ごと下がる。今や、マカロフが、失われた椅子の左前脚の代わりを務めている。

「聞けなくても、さほど困らないわ。その件が、あたしたちの最優先事項ではない、というのが一つ」鈴乃は言った。「そして、もう一つ。カザギワの人間が訪ねてきただけで、簡単に尻尾を出し、あたしたちをこの、アイザックのアトリエへと案内してくれたあなたは、さほど利口ではない。だからきっと、たくさん足跡を残してる。まるで、土足で空き巣に入った、間抜けな泥棒みたいにね。足跡を追えば、あなたの持ってる情報には、たどり着くことができる。違うのは、それが早いか遅いか、よ。まあそれも、たいした差があるかどうか、疑問が生じるところだけど」

「分かったわ。話す。だから」

 最後まで言わせる必要はなかった。シドニーの肩ごと椅子の背もたれを蹴り、元の位置に戻した。

「賢明な判断ね、マダム。それで?」

「アイザックのためよ。全部、あの人のため」

つづく




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posted by 城 一 at 21:41| 長編小説 焔-HOMURA-[integral] | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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