Gusuku LABELへようこそ!
最近、自分がフリーメールを活用できない人間だってことに気付きました。

2008年05月30日

ブログ小説 焔-HOMURA-[integral] 第182回(2版)


ブレーキの壊れた車なら。


「ダンクの様子はどうだ?」

 リヴァは言った。〈ツガ〉の息がかかった病院の、個室。ベッドでダンクが眠っていた。立ち上がろうとしたバーバーを制し、背もたれのない円椅子に座りなおさせた。拳をぶつけ合う。

 バーバーは、ダンクに視線を戻して、言った。

「変わりないよ。ときどき、うなされてるみたいだけど。悪い夢でも見てるのかな」

「病院、あまり好きじゃないからな」

 アイザックとの戦闘後、この病院へと運び込まれてから、ダンクは深い眠りに落ちたままだった。医者は、そう長くはかからないだろうと請け負った。シドのものとは違い、ダンクの眠りは、命に関わるものではないとも。ただ、受けたダメージが大きすぎ、彼を深い眠りに誘っているだけだという話だった。

「お前の方は、大丈夫なのか、バーバー?」

「寝る間も惜しんで、リハビリ中さ」バーバーは肩をすくめて、おどけた。その小さな仕草でさえ、体のどこかが痛んだらしく、軽く眉をしかめた。「僕も、病院はあまり好きじゃないんだ。消毒液のにおいが、だめなんだよ」

「ヘアトニックのにおいの方が、好みってわけだ」

「床屋(バーバー)の息子だから? 偏見だね。ヘアトニックにも、色々種類がある。好き嫌いはあるさ。人よりも、好きなものが多いだけでね」

「戦力が減ったな」

「うん」

 シドは重体。昏睡の中で、生死の狭間をさまよっている。いつ、答えが出るのか、医者も分からないと言っていた。ただ、長くはかからないというのが、医者の見解だった。ネコは、車椅子なしでは歩くこともままならない状態。ログハウスに、応援に来ていた〈ツガ〉の者たちも、二人が死に、三人が、体の動きに差し支えがない程度だが、傷を負った。磐井は脚を撃たれ、歩くには松葉杖が必要だった。

「慶慎に執着してるのは、ただの、俺の個人的な感情からだ」ポケットに両手を突っ込んだ。折れた左腕だけは、ギプスに包まれているので収まらなかった。「お前は、来なくていい。あとは、俺一人でやる」

「彼は、ただ街で偶然会ったってだけの、友だちだからね。僕にとっては」

「ああ」

「君にとっては、亡くした兄弟の面影が重なるから、命を賭ける価値があるのかもしれないけど。僕がそんなことをしていたら、一年三百六十五日、命を賭け続けることになる」

「トゥエンティフォー・セヴン」

「なんて言って、下りるとでも?」

「バーバー」

「リヴァ。下りるつもりなら、最初から下りてる」バーバーは、ダンクの顔を見下ろしながら、微笑んだ。「もう少し、計算高くて、クールな頭を持ってるつもりだったんだけどね」

「俺も、そう思ってた」

「賢く生きるのも、大切だけど」バーバーは言った。「負けっぱなしで迎えるフィナーレに満足するほど、枯れてはいないつもりさ」

「困ったことだな。俺たち三人組の中から、いつの間にか、ブレーキ役がいなくなってる」

「ブレーキの壊れた車なら、チキン・レースで負けることはない」

「勝つか」

「あるいは、死ぬか」

 バーバーが顔を上げた。リヴァはその手を取り、思いきり力を込めて握った。

「そうだな」病室の窓の外では、夜が明け始めていた。「その通りだ」

つづく




続きを読む
前回の話を読む
ブログ小説 焔-HOMURA-[integral] 第1回から読む
ブログ小説 焔-HOMURA- scene1から読む
posted by 城 一 at 03:32| 長編小説 焔-HOMURA-[integral] | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。